「国税専門官になるにはどうすればいい?」
「大学を卒業していないとなれない?」
「試験はどれくらい難しい?」
国税専門官に興味を持った方の中には、このような疑問を持っている方も多いでしょう。
国税専門官は、国税局や税務署などで税務調査や滞納処分などに携わる国家公務員です。
国税専門官になるには、原則として人事院が実施する「国税専門官採用試験」に合格したうえで、国税局などの採用面接を経て採用される必要があります。
2026年度の国税専門官採用試験には9,693人が申し込み、3,385人が最終合格しました。
この記事では、国税専門官になる方法から仕事内容、受験資格、試験内容、倍率、給料、向いている人まで、国税庁・人事院の最新情報をもとに詳しく解説します。
これから国税専門官を目指そうと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
※試験制度や給与などは変更される場合があります。実際に受験する際は、人事院・国税庁が公表する最新情報も必ず確認してください。
国税専門官とは?
国税専門官は、国税局や税務署などで働く税務の専門職です。
国税庁は、国税専門官を「税のスペシャリスト」と位置づけています。
税金は、社会保障、教育、公共サービスなど国のさまざまな活動を支える重要な財源です。
国税専門官は、法律・経済・会計などの専門知識を活用しながら、税金が適正に申告・納付されるよう税務調査や滞納処分などを行います。
国税専門官として採用された後は、専門的な研修を受け、税務署などで経験を積みながら税務の専門家としてキャリアを築いていきます。
国税専門官の仕事内容
国税専門官の代表的な仕事として、
・国税調査官
・国税徴収官
・国税査察官
があります。
それぞれ仕事内容が異なります。
国税調査官
国税調査官は、個人や企業などを訪問し、提出された申告内容が適正かどうかを調査・検査する仕事です。
必要に応じて申告に関する指導なども行います。
税金が正しく申告されているかを確認する、税務行政の重要な仕事です。
国税徴収官
国税徴収官は、納期限までに納付されていない税金について、督促や滞納処分などを行います。
納税に関する指導も国税徴収官の仕事です。
税金を単に「取り立てる」という仕事ではなく、それぞれの状況を確認しながら法律に基づいて適正な徴収を行います。
国税査察官
国税査察官は、悪質な脱税が疑われる事案などを扱います。
裁判官から許可状を得て捜索や差押えなどの強制調査を行い、刑事責任を追及すべき事案について告発します。
国税査察官は、一般に「マルサ」と呼ばれることもあります。
なお、国税専門官として採用された人が最初から必ず国税調査官・国税徴収官・国税査察官のいずれかになるという単純な仕組みではありません。
採用後は研修や実務経験を積みながら、それぞれの職務を担当していきます。
国税専門官になるには?
国税専門官になるための基本的な流れは次のとおりです。
- 国税専門官採用試験に申し込む
- 第1次試験を受験する
- 第1次試験に合格する
- 第2次試験を受験する
- 最終合格する
- 希望する国税局などの採用面接を受ける
- 採用内定を得る
- 国税専門官として採用される
2026年度試験では、第1次試験が5月24日、第2次試験が6月22日~7月9日、最終合格発表が8月12日に行われました。
その後、採用面接を経て、10月1日以降に採用内定、原則として翌年4月1日に採用という流れです。
最終合格=採用ではない
ここは国税専門官を目指すうえで重要なポイントです。
国税専門官採用試験に最終合格したからといって、その時点で国税専門官としての採用が確定するわけではありません。
最終合格者は採用候補者名簿に記載され、希望する国税局などの採用面接を経て採用されます。
そのため、
「採用試験の最終合格」
だけではなく、
「希望する国税局などから採用される」
ところまでが国税専門官になるためのステップです。
国税専門官になるには大学卒業が必要?
必ずしも「大卒」でなければ受験できないわけではありません。
2026年度の受験資格では、1996年4月2日から2005年4月1日生まれの人について、大学卒業を受験条件とはしていません。
一方、2005年4月2日以降生まれの人については、
・大学(短期大学を除く)を卒業した人
・2027年3月までに大学卒業見込みの人
・人事院がこれらと同等の資格があると認める人
が対象となっています。
「大卒程度試験」という言葉から「大学を卒業していなければ絶対に受験できない」と思われることがありますが、大卒程度は試験のレベルを示すものであり、受験資格は年齢や学歴等の条件を個別に確認する必要があります。
受験資格は年度によって対象となる生年月日などが変わるため、実際に受験する年度の受験案内を必ず確認しましょう。
国税専門官採用試験にはAとBがある
国税専門官採用試験には、
・国税専門A(法文系)
・国税専門B(理工・デジタル系)
の2区分があります。
国税専門Bは、税務行政のDXなどを背景として2023年度試験から設けられました。
そのため、法律・経済・会計などを学んできた人だけでなく、理工・デジタル系の知識を持つ人にも国税専門官を目指す道があります。
国税専門A
国税専門Aは、法律・経済・会計などを中心とした試験区分です。
専門試験では、民法・商法、会計学、憲法・行政法、経済学など幅広い分野が出題されます。
国税専門B
国税専門Bは理工・デジタル系の試験区分です。
基礎数学のほか、情報数学・情報工学、統計学、物理、化学、経済学、英語などが試験範囲に含まれています。
自分の大学での専攻や得意分野などを踏まえて、どちらの区分を受験するか検討しましょう。
2026年度の国税専門官採用試験の内容
国税専門官採用試験では、第1次試験と第2次試験が実施されます。
2026年度の主な試験内容を確認してみましょう。
基礎能力試験
第1次試験では、公務員として必要な基礎的能力を確認する多肢選択式の基礎能力試験が行われます。
2026年度は30題、試験時間1時間50分です。
文章理解、判断推理、数的推理、資料解釈のほか、自然・人文・社会に関する時事や情報などが出題範囲となっています。
国税専門Aの専門試験
国税専門Aでは、専門試験として多肢選択式と記述式の試験があります。
多肢選択式は58題が出題され、そのうち40題を解答します。
民法・商法、会計学、憲法・行政法、経済学、英語、財政学、経営学、政治学・社会学・社会事情、商業英語などが出題範囲です。
記述式では、
・憲法
・民法
・経済学
・会計学
・社会学
の5科目から1科目を選択します。
国税専門Bの専門試験
国税専門Bの多肢選択式専門試験も58題が出題され、そのうち40題を解答します。
基礎数学、民法・商法、会計学のほか、情報数学・情報工学、統計学、物理、化学、経済学、英語などが出題されます。
記述式では、科学技術に関連する領域について論述します。
第2次試験では人物試験も行われる
第2次試験では、
・人物試験
・身体検査
が行われます。
人物試験は、人柄や対人的能力などを確認する個別面接です。
身体検査では、主として一般内科系の検査が行われます。
国税専門官は面接対策も重要
国税専門官を目指すなら、筆記試験だけに集中すればよいわけではありません。
2025年度試験から国税専門官採用試験の制度が見直され、対人能力をより重視する観点から人物試験の配点比率が引き上げられました。
2026年度の配点比率は、
・基礎能力試験:2/10
・専門試験(多肢選択式):3/10
・専門試験(記述式):2/10
・人物試験:3/10
となっています。
人物試験は専門試験(多肢選択式)と同じ3/10です。
そのため現在の国税専門官採用試験では、筆記試験だけでなく面接対策も重要と考えておいたほうがよいでしょう。
2026年度の国税専門官の倍率
人事院が公表した2026年度の国税専門官採用試験の実施結果は次のとおりです。
国税専門A
・申込者数:9,369人
・第1次試験受験者数:6,494人
・第1次試験合格者数:5,652人
・第2次試験受験者数:4,664人
・最終合格者数:3,291人
・申込者数÷最終合格者数:2.8倍
・第1次試験受験者数÷最終合格者数:2.0倍
国税専門B
・申込者数:324人
・第1次試験受験者数:185人
・第1次試験合格者数:159人
・第2次試験受験者数:126人
・最終合格者数:94人
・申込者数÷最終合格者数:3.4倍
・第1次試験受験者数÷最終合格者数:2.0倍
A・B合計
・申込者数:9,693人
・第1次試験受験者数:6,679人
・第1次試験合格者数:5,811人
・第2次試験受験者数:4,790人
・最終合格者数:3,385人
・申込者数÷最終合格者数:2.9倍
・第1次試験受験者数÷最終合格者数:2.0倍
数字だけを見ると、「倍率2倍程度なら簡単なのでは?」と感じるかもしれません。
しかし、倍率だけで試験の難易度を判断するのは適切ではありません。
特に国税専門Aでは、基礎能力試験に加えて法律・経済・会計など幅広い専門科目への対策が必要です。
さらに専門記述と人物試験もあります。
「何人に1人が合格するか」だけではなく、「合格するためにどの程度の試験対策が必要なのか」まで含めて考える必要があります。
国税専門官は独学でも合格できる?
国税専門官採用試験には、「予備校や通信講座を受講しなければ受験できない」といった条件はありません。
そのため、独学で合格を目指すこともできます。
ただし、特に国税専門Aでは、
・基礎能力試験
・法律
・経済
・会計
・専門記述
・人物試験
など幅広い対策が必要です。
そのため、
・自分で学習計画を立てられる
・得意科目と苦手科目を把握できる
・必要な教材を自分で選べる
・長期間継続して勉強できる
・面接対策まで自分で準備できる
という人は独学を検討しやすいでしょう。
一方、
「何から勉強すればいいかわからない」
「大学や仕事と両立しながら効率よく勉強したい」
「専門記述や面接まで含めて対策したい」
という人は、公務員予備校や通信講座を利用する方法もあります。
大切なのは「独学か予備校か」という形式だけではなく、自分が合格まで学習を継続できる方法を選ぶことです。
国税専門官の給料・年収は?
国税専門官には「税務職俸給表」が適用されます。
国税庁が公表している2026年度の初任給は、国税専門官採用の場合、俸給月額265,400円です。
東京都特別区内に勤務する場合は、地域手当を含めて月額318,480円となっています。
さらに国税庁は、2026年度に東京都特別区で勤務する国税専門官について、年間収入を478万2,000円と示しています。
このほか、条件に応じて扶養手当、通勤手当、住居手当などが支給されます。
国税専門官の平均年収を見るときは注意
インターネット上では「国税専門官の平均年収○○万円」と紹介されていることがありますが、数字の見方には注意が必要です。
人事院の2025年国家公務員給与等実態調査では、「税務職俸給表」が適用される職員全体の平均給与月額は442,129円でした。
ただし、この数字は国税専門官だけを集計した平均ではありません。
年齢や勤続年数、役職、勤務地、各種手当などによって実際の給与は異なるため、「国税専門官なら誰でも平均年収○○万円」と考えないようにしましょう。
これから国税専門官を目指す人にとっては、平均年収だけを見るより、まず国税庁が公表している初任給や初年度の年間収入を確認するほうが実態をイメージしやすいでしょう。
国税専門官として採用された後は?
国税専門官として採用されると、まず約3か月間の専門官基礎研修を受講します。
その後、採用された国税局管内の税務署に配属されます。
さらに専攻税法研修や実務経験、専科研修などを通して、税法・簿記などの専門知識や実務能力を身につけていきます。
国税専門官は、試験に合格した時点で税務のすべてを理解している必要があるわけではありません。
採用後にも専門的な研修制度が用意されています。
国税専門官の転勤範囲は?
国家公務員というと「全国転勤が多い」というイメージを持つ人もいるかもしれません。
国税庁によると、国税専門官の転勤は基本的に採用された国税局の管内で行われます。
異動のサイクルは3~4年となるケースが多いとされています。
また、異動のたびに必ず転居が必要になるわけではありません。
勤務地を重視して公務員を目指している人にとっては、採用を希望する国税局の管轄地域についても事前に確認しておくとよいでしょう。
国税専門官に向いている人
国税専門官の仕事では、法律・経済・会計などの専門知識を継続して身につけていく必要があります。
そのため、
・数字や法律に抵抗がない人
・専門知識を学び続けられる人
・正確に物事を確認できる人
・責任感を持って仕事ができる人
・公平・公正な立場で判断できる人
などは国税専門官との相性を考えやすいでしょう。
また、国税専門官はパソコンに向かって数字だけを見る仕事ではありません。
税務調査や徴収などでは、個人や企業の担当者など多くの人と接します。
国税庁も、専門知識だけでなくコミュニケーション能力が必要になる仕事であることを示しています。
そのため、人と話すことや相手の話を聞くことも重要な仕事です。
国税専門官を目指すなら何から始めればいい?
国税専門官に興味を持ったら、いきなり参考書や講座を購入する必要はありません。
まず確認したいのは次の4点です。
- 自分が受験資格を満たしているか
- 国税専門Aと国税専門Bのどちらを受験するか
- 試験科目と現在の自分の得意・不得意
- 独学で進めるか、予備校・通信講座を利用するか
特に国税専門Aでは試験範囲が広いため、試験直前になってからすべてを準備するのは大変です。
国税専門官を本格的に目指すことを決めたら、試験日から逆算して学習計画を立てましょう。
動画でも国税専門官について解説しています
YouTube「なるにはチャンネル」でも、国税専門官について解説しています。
仕事内容、国税専門官になる方法、採用試験、給料などを動画で知りたい方は、記事とあわせてご覧ください。
国税専門官についてよくある質問
高卒でも国税専門官になれる?
受験資格を満たしていれば、「大学を卒業していない」という理由だけで一律に受験できなくなるわけではありません。
ただし、受験する年度の年齢等によって受験資格が異なります。
必ず人事院が公表する最新年度の受験案内を確認してください。
なお、高校卒業程度の別の採用試験として「税務職員採用試験」もあります。
国税専門官採用試験とは別の試験なので混同しないようにしましょう。
国税専門官は国家公務員?
国税専門官は国家公務員です。
国税局や税務署などで税務行政に携わります。
国税専門官になるには資格が必要?
税理士や簿記などの特定資格を取得することが、国税専門官採用試験を受験するための必須条件になっているわけではありません。
国税専門官になるためには、受験資格を満たしたうえで採用試験に合格し、採用されることが基本となります。
国税専門官AとBのどちらを受験すればいい?
法律・経済・会計などを中心に対策するなら国税専門A、理工・デジタル系の知識を活かしたい場合は国税専門Bが主な選択肢になります。
実際の試験科目を確認して、自分の専攻や得意分野との相性から判断しましょう。
国税専門官は最終合格すれば必ず採用される?
必ず採用されるわけではありません。
最終合格者は採用候補者名簿に記載され、その後、希望する国税局などの採用面接を経て採用されます。
まとめ|国税専門官になるには採用試験合格+採用が必要
国税専門官は、国税局や税務署などで税務調査や滞納処分などに携わる国家公務員です。
国税専門官になるには、人事院が実施する国税専門官採用試験に合格し、その後の採用面接を経て国税局などに採用される必要があります。
2026年度試験では9,693人が申し込み、6,679人が第1次試験を受験し、3,385人が最終合格しました。
現在の試験は国税専門Aと国税専門Bに分かれており、筆記試験だけでなく専門記述や人物試験への対策も重要です。
国税専門官に興味を持ったら、まず仕事内容と試験制度を理解したうえで、
「自分は本当に国税専門官を目指したいのか」
「AとBのどちらを受験するのか」
「独学と予備校・通信講座のどちらで対策するのか」
を考えてみましょう。
目指すことを決めたら、次は試験日から逆算して具体的な勉強計画を立てることが合格への第一歩です。